1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラーが亡くなるまでの間、プロパガンダを主導する宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス。当初は平和を強調していたが、ユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進むヒトラーから激しく批判され、ゲッベルスは信頼を失う。愛人との関係も断ち切られ、自身の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作、大衆を扇動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画し、国民の熱狂とヒトラーからの信頼を再び勝ち取るゲッベルス。独ソ戦でヒトラーの戦争は本格化し、ユダヤ人大量虐殺はピークに達する。スターリングラード敗戦後、ゲッベルスは国民の戦争参加をあおる“総力戦演説”を行う。しかし、状況がますます絶望的になっていく中、ゲッベルスはヒトラーとともに第三帝国のイメージを後世に残す最も過激なプロパガンダを仕掛ける。
ヒトラーの腹心として、プロパガンダ政策を担ったゲッベルスは、演説、ラジオ、映画などメディアを通して国民感情を煽り、操り、ヒトラー政権を拡大させた。本作は、入念なリサーチに基づきゲッベルスの驚きの発言や行動、ヒトラーやナチ幹部たちの恐るべき会話など、裏側の実態を描き出し、その半生と戦略を暴き出す。
本作が2024年ミュンヘン映画祭で観客賞を受賞し評価されたのは、ゲッベルスの手法が現在も広がり続けているからに他ならない。ウクライナやガザにおける戦争、ポピュリズムや極右台頭の背後で喧伝される言葉や映像、量産されるフェイクニュース。インターネット全盛の現代社会で我々がどのようにウソを見抜き、真実を見極めることができるのか。これは現代社会への警告である。
希代の悪人を知らなければ、
現在の扇動家たちの正体を
暴くことはできない。
ヨアヒム・A・ラング監督
それは起きた。
また起きるかもしれない。
それこそを伝えるべきだ。
プリーモ・レーヴィ
<アウシュビッツの生存者>
1959年、ドイツ生まれ。作家、映画監督。ハイデルベルクとシュトゥットガルトの大学でドイツ語と歴史を学ぶ。初期にはドキュメンタリーや長編映画を制作し、テレビ番組やショー、映画の監督を務めた。2013年にドイツテレビ賞受賞作『GEORGE』、2018年には、その年の最も重要なドイツ語映画のひとつである『MACK THE KNIFE - BRECHT'S THREEPENNY FILM』を監督。作品は、独仏ジャーナリズム賞、バイエルンテレビ賞、ユーロヴィジョニ、ドイツテレビ賞、ニューヨーク映画祭世界金賞、ゴールデン・プラハ特別賞など、最も重要な映画賞やテレビ賞を受賞している。
1982年8月3日、オーストリア生まれ。ドイツ語圏で最も多才な俳優の一人で、これまで100本を超える作品に出演し、そのうち50本を超える映画に出演。フォルカー・シュレンドルフ、ドーリス・デリエ、マルコ・クロイツパイントナー、クリストフ・シュリンゲンズィーフ、レアンダー・ハウスマンなどの監督作に起用。シュタットローバーは、そのユニークな演技が評価され、バイエルン映画賞、ハンブルク演劇賞、プレミオ・バッコなど、さまざまな賞を受賞、ノミネート。40歳の彼は、俳優、監督、作家、ミュージシャンとして活躍。最近作は、ローベルト・ゼーターラー原作の『ある一生(原題:EIN GANZES LEBEN)』、ベルリン国際映画祭出品作のヨーゼフ・ハダー監督の『ANDREA LÄSST SICH SCHEIDEN(英題:Andrea Gets a Divorce)』、アウグスト・シュメルツァーの小説『Der Totengräber im Buchsbaum』を基にした『AM ENDE WIRD ALLES SICHTBAR(英題:All Will Be Revealed)』。
1967年12月21日、オーストリア生まれ。ウィーンのヨーゼフシュタット劇場で数年間アンサンブルを務めた後、主にカメラの前で演技をするようになる。1995年、フーチャン・アラハヤリ監督作『FEAR OF HEIGHTS』の不良少年マリオ役でマックス・オフィルス賞(最優秀若手俳優賞)を受賞。1998年、ヨーロッパ・フィルム・プロモーションによるヨーロッパ映画のシューティング・スターに選ばれる。2008年、『EINE FOLGENSCHWERE AFFÄRE』(2007)でバイエルン・テレビ賞テレビ映画部門最優秀男優賞にノミネート。2011年と2020年には、オーストリア・ロミー賞のテレビ部門最優秀人気男優賞を受賞。
1980年ウィーン生まれ、ベルリン在住。2001年、ウルリヒ・ザイドル監督の『ドッグデイズ(英題:DOG DAYS)』に出演し、ヴェネチア国際映画祭グランプリを受賞。その後、カンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映されたジェシカ・ハウスナー監督の『Hotel ホテル(原題:HOTEL)』で本格的に女優の道へ。続く2005年のベルリン国際映画祭では、ヨーロッパ・シューティング・スター賞を受賞。その後、受賞作が相次ぎ、瞬く間に人気女優へと成長し、現在では70本以上のドイツ国内外の映画・TV作品に出演し、その多才さと技量を発揮している。2010年には、コンペティション部門に出品された『THE ROBBER』の主役としてベルリン国際映画祭に再び登場し、2014年にはコンペティション部門に出品された『十字架の道行き(英題:STATIONS OF THE CROSS)』で印象的な主役を演じ、チームとともにこの作品で銀熊賞を受賞した。2015年以来、彼女はNDRのシリーズ「TATORT」、木村拓哉出演のZDFの国際的シリーズ作品「THE SWARM(ザ・スウォーム)」(2023)、ARD/ORFのシリーズ「TAGE, DIE ES NICHT GAB」(2023)で主演を務め、オーストリアで視聴率ヒットを記録し、ドイツのマスコミや大衆の間で話題を呼んだ。